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【 COLUMN 】マリネッラ創業100年、そして次の100年
――20世紀イタリアの文化と社会とともに――
第八回「1970~79年:“鉛の時代”のなか、好景気が続きクリエイティブが花開く」

2023-9-23MARUNOUCHI TOKYO MIDTOWN

2024年6月に創業110年を迎えるマリネッラ。
メンズファッションエディター矢部克已氏による年代別のコラムを、記念すべき周年に向けてお届けいたします。

 

20世紀にスポットを当てた年代別のコラムは、イタリアの文化・風俗・ファッション・映画・芸術などの歴史を通し、トピック的な政治経済史を挿みながら、この100年の「マリネッラ」の存在を位置づけるものです。
「マリネッラ」の代表的な商品となる、ネクタイの伝統的な魅力や、巧みなものづくりを掘り下げるために準備した、イタリアとナポリの歴史哲学的な視座を踏まえています。

 

オイルショックの影響が多大。大資本をターゲットにしたテロ、大企業経営者を狙う誘拐も多発。慢性的な労働争議で企業経営も不安定化した。イタリア最大手の自動車会社フィアットは、4年もの間、新車の発表は1台もなし。いわゆる「鉛の時代」と呼ばれた70年代だが、驚くことに景気は好調。映画、ファッション、デザインが世界的なリードと遂げる。
1971年、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『ヴェニスに死す』公開。原作は、トーマス・マン。同年、名匠エンツォ・ボナフェの下で修業した、シルヴァーノ・ラッタンジが自身の靴ブランドを立ち上げる。ハンドソーン・ウェルテッドで仕上げたイギリス調の靴は、後に日本でも大ブームとなった。1971年は“ルチアーノ バルベラ”が創業した年でもある。伝統的なスタイルを体現する紳士のリアルなコレクションを展開した。
第1回ピッティ・ウォモの開催は1972年。メンズファッションの大々的な展示会で、出展社は45社(80ブランド)が集まり、バイヤーの来場数は5,000人。会場はホテル・ヴィッラ・メディチだった。実は1回目は、ピッティ・ウォモという名称ではなく、“ウォモ・イタリア”として開催。すでにピッティ・ドンナが開催されていたため、同年第2回の開催からピッティ・ウォモで統一する。
1974年、文化財環境省が設置される。同年、ランボルギーニ『カウンタック』の初の市販モデル「LP400」が誕生した。
1975年、ジェノヴァ出身の詩人、エウジェニオ・モンターレがノーベル文学賞受賞。作家のアントニオ・タブッキは、処女作『イタリア広場』を同年に刊行した。また同年は、セルジオ・ガレオッティと共に、ジョルジオ・アルマーニが自身のブランド“ジョルジオ アルマーニ”を立ち上げる。ミラノに本社を置く。
日刊紙『レプブリカ』が創刊されたのは1976年。
1977年、RAI(国営テレビ放送)がカラー放映を開始した。同年、ネオレアリズモの巨匠映画監督、ロベルト・ロッセリーニ死去。享年71。アレッサンドロ・メンディーニが、プロダクトデザイナー集団「スタジオ・アルキミア」結成したのも1977年だった。
1978年、ファッション界に君臨するベッペ・モデネーゼが指揮を執り、ミラノ・ファッションショーがフィエラ地区で開催される。事実上のミラノ・ファッションショーの開始。パリのオートクチュールに対し、ミラノは高級プレタポルテの発信地となる。同年、ジャンフランコ・フェレは、自身の名を冠したレディースコレクションを発表。メンズコレクションは、その4年後にデビューとなった。ジャンニ・ヴェルサーチが、自身のブランドを立ち上げたのも1978年。ミラノのスピーガ通りに、同時にショップもオープン。さらに同年は、形而上絵画派を興した画家で、後のシュルレアリスムに多大な影響を与えたジョルジョ・デ・キリコがローマで死去。享年90。
1979年、フランチェスコ・コッシーガ中道左派政権が成立した。
“マリネッラ”が大いに飛躍した10年だった。“マリネッラ”のネクタイは、政財界の重要人物たちの胸元を飾るだけではなく、俳優たちにも広がっていく。ジャンニ・アニエッリも愛用者だった。VIPからも愛される“マリネッラ”は、ネクタイの分野でどのブランドよりも先んじて、不動のステイタスを築く。スミズーラのネクタイの拡充とともに、プレタの生産&販売が格段に伸びる。やがて、シャツづくりから手を引き、ネクタイに集中する。

 

Photos by Mimmo and Francesco Jodice for E.Marinella – “Napoli e Napoli” book

Twitter ID : @katsumiyabe

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※マリネッラのネクタイは公式オンラインストアFLOENS TOKYOでもご購入いただけます。

⇒FLOENS TOKYO|E.MARINELLA商品一覧

 

 

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