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【 COLUMN 】僕がナポリのマリネッラを愛してやまない理由 Vol.4/4

2023-10-27MARUNOUCHI TOKYO MIDTOWN

 

Afterhoursにて連載の 藤田雄宏氏によるマリネッラ特集記事を4週連続でお届けいたします。

 

 

MSCベリッシマとマリネッラを繋ぐナポリの絆


2023年9月20日、横浜に寄港していたMSCベリッシマの船内で開催された、MSCクルーズ×マリネッラの地中海スタイルパーティーにて。マリネッラ親子の装いはファッションを超越したところにあって、いつもシンプルなスタイルに小紋タイというスタイルを貫いているところがいい。

 

 

原稿・写真 藤田雄宏   写真 内田 光

 

 

ナポリでの滞在中、夕方に取材を終えて夕飯まで時間が空いたとき、ひとり海を眺めながらボーッとアペリティーヴォを楽しむのが大好きだ。時間があれば高級リストランテが並ぶ静かなマーレキアーロの港の岩場でのんびり寛ぎたいところだが、市内中心部からはちょっぴり遠いこともあり、ずっと手軽に楽しめる観光エリアのど真ん中、“ルンゴマーレ”のテトラポットの上でよく寝そべっている。スーパーマーケットで約€2.5ユーロで買った3本パックの小瓶のペローニとサンカルロのポテチをお供にボーッとするひとときは、店よりだいぶ安上がりでありながら至極贅沢な時間である。

 


僕が寛ぐテトラポットは、マリネッラがあるヴィットーリア広場からダルクオーレがあるメルジェッリーナ方面に少し歩いたあたりと決まっていて、毎度ヴィッラ・コムナーレを背にしながらナポリ湾を眺めている。左にソレント半島、正面にカプリ島、右にポジーリポの丘を一望できるそこでの景観は、ナポリ人だけでなく、ナポリを訪れたすべての旅行者が享受できるオープンな宝物だ。個人的には近場のポジーリポ方面の眺めが大好きで、身を置くたびにお金をかけずに人生を楽しむナポリ人の仲間入りを果たせたような気になれて、“ナポリを見て死ね!”という有名な言葉に、毎度なるほどな、と思わされるのである。

 


そこに身を置いていると、マリネッラは本当に素晴らしいロケーションに店を構えているものだと毎度つくづく実感する。目の前にナポリ湾が広がるヴィットーリア広場は美しいナポリの象徴であり、ナポリに店を構える世界中のブランドも含めて、そこに店を構えているのは今なおマリネッラだけというのが不思議でならないくらいである。いかなるメゾンブランドだろうと、マリネッラから数百メートル内に入ったミッレ通りやフィランジエーリ通りにブティックを構えているのだ。

 


そんなこともあって、海辺のリストランテやクルーズ船でのパーティーでタイドアップする機会に恵まれると、俄然マリネッラのネクタイを選びたい気分に駆られる。マリネッラはカプリ島のような海のリゾートを意識しているわけでもないし、もちろん船を意識しているわけでもないけれど、それでもそういったシチュエーションでは、マリネッラのネクタイが自分にはいちばんしっくりくるのである。

 


僕が自然とそう思えるのも、マリネッラの根底にあるアニマ(精神)に、当たり前のようにナポリの海が存在していて、クルーズ船だったりヨットクラブだったりが自然とその中に溶け込んでいるからだ。

 

2019年3月に就航した“MSCベリッシマ”は、総重量171,598t、全長315.83m、全幅43m、全高75.5m(全19デッキ)、乗客数5655名(キャビン数2217、15デッキ)、乗組員数1,598名を誇る巨大豪華客船だ。©MSCクルーズ

 

 

話変わって、ナポリで海といえば、船である。モーロ・ベヴェレッロの港では、カプリ島やイスキア島、あるいはソレントやポジターノ、アマルフィ方面に向かう観光船がひっきりなしに飛び交い、パレルモとを結ぶフェリーともなれば結構な大きさになるが、それよりずっと巨大で、眩いくらいに美しい豪華客船が停泊していることがしばしばある。

 

同港でよく見かけるのは、ナポリを本拠地とする“MSCクルーズ”の客船である。

 

昨年、英国キュナードの“クイーン・エリザベス”でオーストラリアを旅する機会に恵まれて以来、クルーズ船での船旅の魅力を知ってしまい、イタリアとナポリをこよなく愛する人間として、いつかMSCクルーズで船旅をしてみたいという、憧れにも似た気持ちを強く抱くようになった。

 

今春、2019年に就航した“MSCベリッシマ”が日本に初来航した際、大黒ふ頭で乗船し、素敵なランチを楽しむ機会に恵まれた。

 

ここぞとばかりに船内をくまなく回り、非日常の絢爛な世界、その中に感じられる地中海らしいエレガンス、船旅の快適さを生む最新鋭の設備に、いたく感動させられた。

 

船旅において、その非日常の世界が2日目から徐々に自分の日常の世界へとなっていく、そこに優雅な船旅の魅力があるのだと“クイーン・エリザベス”での船旅を通して気づきがあったので、MSCベリッシマでのこの非日常の世界も、船旅を通して、気づけばそれはそれは素晴らしく優雅で楽しい日常のものになるだろうことは容易に想像できた。

 

さて、船内を簡単にご紹介しよう。

 

まずびっくりしたのは、人々で賑わうアトリウムの階段に燦然と輝くスワロフスキー。スワロフスキーの階段はMSCの象徴でもあり、それは2019年に就航したMSCベリッシマにも受け継がれているのだ。©MSCクルーズ

 

アトリウムを角度を変えて。なんとも優雅な気分に浸れる。©MSCクルーズ

 


“MSCヨットクラブ”のプール。船の中にある特別の船をコンセプトにした“MSCヨットクラブ”のゲストは、24時間バトラーサービスが付いたスイートルームにステイし、専用のレストラン、バー、プール、サンデッキなどをプライベートクラブのような雰囲気の中で楽しめる。©MSCクルーズ

 

非常にゆったりとした空間からなるアトモスフィアプール。天井が開閉式になっている室内プールもある。©MSCクルーズ


3種類のウォータースライダーがある“アリゾナアクアパーク”。体にロープを取り付け、海上80メートルの高さで船を横断する斬新なアクティビティもある。©MSCクルーズ

子どもたちのための専用施設や多様なエンターテインメント・プログラムが用意され、子どもたちも船内で思いっきり楽しめる。©MSCクルーズ

“MSCヨットクラブ”のゲスト専用のレストラン。

 

ラテンアメリカとメキシコの料理をもとにしたストリート料理を提供する“Hola! TACOS&CANTINA”。ブルーコーンタコス、ナチョス、ビーフ・エンパナーダ、タマーレスなどを、人気のトップ10テキーラやメスカルとともに楽しめる。 ©MSCクルーズ

 

985席を誇るロンドンシアターでは、さまざまなショーを楽しめる。©MSCクルーズ

 

24時間のバトラーサービスがついた“MSCヨットクラブ”の客室は全95室。こちらはデラックスイート。©MSCクルーズ

 

ついでにSSCナポリのユニフォームもご紹介!

 

ついでに、“アッズーリ”ことSSC ナポリのユニフォームをご紹介。胸にはメインパートナーであるMSCのロゴが。ブランドはプリンシパルパートナーであるアルマーニの“EA7”製である点もカッコよすぎる!

 

2023年9月20日、横浜の大黒埠頭に停泊中のMSCベリッシマ。©MSCクルーズ

 

1914年6月24日にオープンした僅か20㎡の小さな店“マリネッラ”は、今やナポリ湾から海を越えて世界中の人々に愛されるブランドへと成長を遂げた。マリネッラを象徴するネイビーは、この美しいナポリ湾があったからこそ生まれたもので、ナポリに本社を構え、世界中の海を航行するMSCクルーズの豪華客船と共通するものがある。

 


9月20日、マリネッラ親子の4年ぶりの来日を祝し、横浜の大黒ふ頭に寄港中のMSCベリッシマの船内にて、地中海スタイルのライトランチパーティーが催された。

 

マウリッツィオ・マリネッラ氏とアレッサンドロ・マリネッラ氏の親子。

 

2016 年にナポリに渡り、ポジーリポのマンツォーニ通りにサルトリアを構えているアントニオ・パスカリエッロ氏のもとで5年間工房で住み込み修業をし、2021年に帰国後、横浜の馬車道でSartoria Tramontoを始動した佐々木聖男氏。

 

「ナポリは今の私の核となっているものを育んでくれた町であり、そのナポリを代表するブランドであるマリネッラのネクタイは、いつもここぞのときに締めているネクタイです。自分にとってお守り的な意味合いがありますし、マリネッラのネクタイを締めるとスイッチが入るというか、気がギュッと引き締まるんですよね。ナポリに住んでいるとよくわかるのですが、マリネッラほど多くのナポリ人に愛されているブランドって他にないんじゃないでしょうか」

河合正之氏(左)は、本格的なテーラーリング技術取得のため、ナポリに渡ってジェンナーロ・ソリート氏のもとで修業。現在は地元の名古屋でパターンオーダースーツのサロンGIFTのオーナーである。今春夏、美しいナポリの海、船上や南イタリアのリゾート地での優雅なスタイルをコンセプトにしたブランドLe Barcheを佐々木聖男氏とともにスタートしている。

 

「初めてナポリを訪れた際に、真っ先に訪れたのがマリネッラの店でした。ナポリを愛する私にとって、ナポリのマリネッラの店は聖地であり、そこを訪ねてネクタイを購入できたことは無上の喜びとなりました。マリネッラのネクタイは、私のアイデンティティの表現手段のひとつでもあります。ナポリでの修業時代は、まさにマリネッラの店の前に広がるナポリ湾の美しい景色を眺めては、よく癒されていました(笑)」

 

ちなみに視線を上に向けているふたりが眺めているものとは?

そう、ふたりが眺めていたのは、全長80mに及ぶLEDスカイドームに映し出されたマリネッラの映像だ。©内田 光

右はMSCクルーズジャパンのプレジデンテ、ナポリ出身のオリビエロ・モレリ氏(右)。©内田 光

 

こちらが普段のLEDスカイドーム。24時間、絶えず映像が映し出されている。©MSCクルーズジャパン

 

ナポリを食とファッションの両面で知る、湯島のピッツェリア“ダ・ジョルジョ”のオーナー兼ピッツァイオーロの徳山志英氏。2015年 、ナポリピッツァ世界選手権日本大会の S.T.G.部門で優勝。マリネッラを扱うインポーター、SDIの藤枝惠太社長とは、2008年、ナポリに渡ってピッツァイオーロの修業を始めた頃にナポリで知り合って以来の友人。

 

「私がナポリの“ステッラ”でピッツァイオーロとして修業を始めた同時期に、藤枝惠太さんもナポリのマリネッラで働き始めたんです。ステッラはマリネッラのすぐ近くだったこともあって、よくふたりで会っていました。コスタンティーノ・プンツォ氏にスーツを作ってもらっていることやパンツのモーラの工房を訪ねたことを惠太さんに話したら、とても面白がってくれたのを覚えています。当時に買ったマリネッラのネクタイは今も大切に使っていて、15年経ってもまったく古さを感じさせないし、飽きることもありません。ナポリで窯職人といえばエルネストですが、ナポリでネクタイといえばマリネッラ! ナポリ人の皆がマリネッラを知っていて、ナポリ人はマリネッラのことを誇りにすら思っているんですよね」

 

 

マウリッツィオ・マリネッラ氏と話し込むファッションディレクターの矢部克已氏。矢部氏はかつてナポリに住んでいたこともあり、ベッラナポリの池田哲也氏とともに、日本で最も古くからマリネッラを知るジャーナリストでもある。ネクタイは、4代目アレッサンドロ・マリネッラ氏のプロジェクトである、原材料にオレンジファイバーを使用したものだ。©内田 光

 

「ナポリのヴィットーリア広場に佇む僅か20㎡の小さな店が、世界へと羽ばたいてこうして100年以上も続いているのは、ある意味奇跡的な存在といえます。マリネッラのネクタイは、英国で織られた表地のシルクに合わせて用いられている芯地とのバランスが素晴らしく、締めたときの収まりのよさは他にないものがあります。単に高品質のネクタイというだけでは片づけられない、歴史に培われたナポリの職人の技が宿っていると思うんです。マリネッラはネイビーの小紋タイが有名ですが、マウリッツィオ・マリネッラ氏はいつもネイビー無地のスーツを着用していることから、それが無地のネクタイに転化できているとでもいうのでしょうか、個人的にはソリッドタイにもマリネッラらしさを感じます」

 

マウリッツィオ・マリネッラ氏と日本におけるマリネッラのブランドマネージャー、外島大輔氏。ダークネイビーのスーツに白シャツ、白のネクタイがとてもエレガントで爽やかだ。©内田 光

 


中央は、駐日イタリア大使のジャンルイジ・ベネデッティ氏。

 


マウリッツィオ・マリネッラ氏の向かって右隣は、SDIの代表取締役、藤枝惠太氏。かつてナポリのマリネッラで働いていたこともあり、マリネッラへの愛は並々ならぬものがある。マウリッツィオ・マリネッラ氏からもいつも“ケイタ、ケイタ”と絶大な信頼を寄せられていて、まるでマリネッラのネクタイで結ばれているかのように、ふたりの揺るぎない絆を、僕は会うたびに強く感じている。

 

SDIの女性陣はネイビーのワンピースに合わせた首にスカーフがとても素敵だ。©内田 光

 

船上での地中海スタイルのライトランチパーティーを楽しむゲストたち。©内田 光

ナポリから海を越えて羽ばたいたマリネッラとMSCクルーズ、この日は横浜にいながらナポリの愛をたっぷりと感じられる、最高に素敵なひとときとなった。MSCベリッシマのライトランチパーティーを通して思ったことは、「ナポリ」、「海」、「船」というキーワードにおいては、ネイビーと白がとてつもなく似合うんだってこと。

 
MSCベリッシマへの憧れ、マリネッラへの愛が、ますます深まった1日となった。

 

 

さて、“僕がナポリのマリネッラを愛してやまない理由”と題し、4回にわたってマリネッラの紹介をしてきた。

 



ナポリを訪れた僕が最初に向かう先は大抵マリネッラで、それは自分にとってのナポリの象徴であるマリネッラを訪れることで、自分の脳をナポリ脳に切り替えるべく、自身に気合いを注入するためでもある。

 



マウリッツィオ・マリネッラ氏だけでなく、店のスタッフたちも皆とても魅力的ないい人たちで、マウリッツィオ・マリネッラ氏のホスピタリティが自然とスタッフの皆にも浸透しているのが毎回強く感じられる。ナポリ人がマリネッラの店をフラッと訪ねたがるように、だから僕もついつい訪ねたくなってしまうのだ。

 



マリネッラの店がどれほどナポリ中の皆に愛されているかも上手く伝えられただろうか?  第2回の記事で、ナポリの店で会ったお客さんは「マリネッラの店は、私たちナポリ人の“アニマ(魂)”なんだ」と話していたし、MSCベリッシマでのパーティーで久しぶりにお会いしたダ ジョルジョの徳山志英氏は、「ナポリ人はマリネッラの店を誇りに思っている」と話してくれた。本当にその通りだと思う。

 



「マウリッツィオ・マリネッラ氏の愛が詰まっているマリネッラのネクタイは、私にとって幸せの象徴でもあるのです」と話してくれたのは、第3回で紹介したGrand Hotel Parker’s(グランド・ホテル・パーカーズ)のジェネラル マネージャー、アンドレア・プレヴォスティ氏。本当にその通りだと思った。

 



第1回で紹介した、ナポリのマリネッラの最古参のひとりで毎朝5時30分に出勤しているフィリピン人の“トミーさん”ことトーマス・ドロー氏の言葉も印象深い。

 



「マリネッラでは30年間働いていますが、マウリッツィオさんはスタッフの誰よりも早く、毎朝6時に出勤します。私がここに入ったときから既にそうでした。出張から夜遅くにナポリに戻ってきた翌朝も、会食が深夜に及んだ翌朝も、ナポリにいるときは必ず朝6時に出勤し、閉店時間の20時までいつも店に立っています。仕事に誇りと情熱をもって誰よりもよく働き、皆から慕われている。マリネッラの店はマウリッツィオさんにとって人生そのもの。彼にとって、ここで仕事することが何よりの生き甲斐なんだと思います」

 



そんなマリネッラの新しい時代を発展させていくのは、4代目のアレッサンドロ・マリネッラ氏だ。彼はマリネッラの伝統をデジタル市場に移しながら、マリネッラに息づくホスピタリティの精神や製品の価値をお客様にしっかり伝えている。今の時代、マリネッラが向き合わなければいけなかった問題に正面から取り組んだアレッサンドロ氏はeコマースを見事かたちにして大成功させ、パンデミックのさなか、1914年から続くナポリの“小さくて大きな”名門ブランドの窮地を一気に救った。

 



その中には、店に足を運べないかわりにeコマースを通してマリネッラを応援したマリネッラのファンもたくさんいた。

 



そして、最後はマウリッツィオ・マリネッラ氏のこの言葉で締めたい。

 



「マリネッラとは奇跡の産物だと思っています」

 

 

 

 

Afterhours – アフターアワーズ (ahours.jp)

 

 

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